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なぜギターの弦は6本なのか?

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ギターは世界中で愛される楽器の一つですが、その特徴的な6本の弦について、なぜこの本数に落ち着いたのか疑問に思ったことはありませんか?実は、ギターが6本の弦を持つようになった背景には、楽器の進化の歴史や音楽的な実用性が深く関係しています。本記事では、ギターの弦が6本である理由を歴史的背景や音楽理論、実用性の観点から掘り下げてみたいと思います。

ギターの歴史と弦の進化

ギターの起源をたどると、古代エジプトやメソポタミア文明にまで遡ることができます。これらの文明では、リュートやシタールに似た多弦楽器が使われていました。その後、中世ヨーロッパでは「ビウエラ」や「ルネサンスギター」と呼ばれる4弦や5弦の楽器が登場し、これらが現代ギターの祖先とされています。
18世紀後半から19世紀初頭にかけて、ギターは大きな変化を迎えました。それまで複数の弦をペアで張る「複弦」構造が一般的でしたが、巻弦(細い金属線を巻き付けた弦)の発明により単弦でも十分な音量と音質を得られるようになりました。この技術革新により、複弦構造は徐々に廃れ、現在のような単一弦構造が主流となります。
また、この時期にはギター自体の形状も改良され、音域や演奏性を考慮して6本の弦が標準化されました。この6本という本数は、それ以前に存在していた5弦ギターから1本増える形で進化したものです。追加された低音弦(現在の6弦)は、より広い音域をカバーするために導入されました。

音楽理論と6本の合理性

ギターが6本の弦を持つ理由には音楽理論的な側面もあります。標準的なギターでは、各弦は以下のようにE-A-D-G-B-E(低音から高音)という調律で設定されています。この調律は「4度」「4度」「4度」「3度」「4度」という間隔で構成されており、コード演奏やスケール演奏において非常に効率的です。
 • 音域の広さ:6本の弦によって約4オクターブもの広い音域をカバーできます。これにより、メロディー演奏だけでなく伴奏やコード進行も自在に行えるようになります。
 • 指板上での利便性:6本という本数は、人間の手で無理なく押さえられる範囲内で最大限の表現力を引き出す設計になっています。例えばピアノと異なり、ギターでは一度に複数の音を押さえる必要がありますが、6本ならば指で十分対応可能です。
もしこれが7本や8本になると、一部の演奏者には便利かもしれませんが、多くの場合は指板上で混乱を招きます。一方で5本だと音域が狭まり、多様な表現力が制限されてしまいます。このような理由から、6本というバランスが取れた構成が選ばれたと言えます。

実用性と演奏スタイルへの影響

もう一つ重要なのは、6本という構成が演奏スタイルに与える影響です。クラシックギターやフォークギターだけでなく、エレキギターでもこの6本という仕様は幅広いジャンルに対応できる柔軟性を持っています。
例えば、ポピュラー音楽ではコード進行を基盤とした伴奏が多く使われます。6本あることで低音から高音までバランスよく響きを作り出すことができるため、多くのジャンルで採用されています。またソロ演奏でも、高音域だけでなく低音域も活用することで豊かな表現力を発揮できます。
さらに、この6本という仕様は初心者にも扱いやすい点も見逃せません。例えばコードフォーム(押さえ方)は基本的なものから複雑なものまで幅広くありますが、その多くはこの6本という設計だからこそ可能です。もし7本以上になると初心者には難易度が高くなりすぎるでしょうし、逆に5本以下だと表現力が不足してしまいます。

7弦・8弦ギターとの比較

近年では7弦や8弦ギターも登場し、一部ジャンル(特にメタル系)では人気があります。しかしこれらはあくまで特定用途向けであり、多くの場合6弦ギターほど汎用性はありません。7弦以上になると低音域が拡張されますが、その分ネック幅も広くなるため演奏性に影響します。また、一般的な楽譜やタブ譜も6弦仕様で書かれているため、新しいプレイヤーには敷居が高い場合があります。

結論:合理性と歴史的背景による「6」

最終的に、ギターの弦が6本になった理由は歴史的背景と実用性・合理性によるものです。18世紀以降の技術革新によって現在の形状へ進化し、その過程で「人間工学」「音楽理論」「演奏スタイル」の観点から最適解として選ばれた結果と言えます。
この絶妙なバランスのおかげで、ギターは初心者からプロまで幅広い層に愛され続けています。そしてそのシンプルながら奥深い設計こそが、多くの人々を魅了する理由なのかもしれません。

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