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ブラジリアンローズウッド(ハカランダ)は、なぜこんなにも希少で、その音が特別とされるのか?

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ハカランダとは何か?

まず、ハカランダは学名「Dalbergia nigra」、英名では「Brazilian Rosewood」と呼ばれる木材で、主にブラジル原産のローズウッドの最高峰です。ギターのサイドやバック材として、長年にわたり数多くの名器に使用されてきました。その深く豊かな音色、贅沢な木目の美しさから「音の宝石」とも称されます。ハカランダは硬質で高密度な木材であり、反響音が豊かで明瞭なアタック感を生み出すことができるため、専門家やプロのギタリストから絶大な支持を受け続けてきました。

ハカランダの音が特別な理由

ハカランダが生み出す音質の特徴は多岐にわたります。まず、弦の振動に対するレスポンスの速さが挙げられます。高密度で硬いため、振動を遅延なくボディ全体に伝え、鮮明で力強いアタック音を実現します。こうした特性により「音の立ち上がりが速い」という表現がされ、プレイのニュアンスを細かく表現できるのです。

次に、音色のバランスの良さ。豊かな低音は太く深みがあり、音に厚みを持たせます。一方で高音も「パリーン」と透き通り、煌めく透明感を伴うため、全体として温かくもクリアな音が生まれます。この“まろやかで上品”な音色の調和は、他ではなかなか得られません。さらに、ハカランダならではの「余韻」の美しさも驚異的です。音が消えた後も長く持続し、艶やかな響きが空間に残るため、演奏に深みと情緒をもたらすのです。こうした余韻は、ハカランダが高級ギター材の中で一線を画す所以でもあります。

その希少性の理由

では、なぜハカランダは「木材として極めて希少」なのでしょうか?その背景には自然環境問題と国際的な規制が深く関与しています。

まず第一に、ブラジル国内での過度な伐採による資源の枯渇があります。ハカランダは元々、美しい木目と優れた音響特性から家具産業や楽器製造に多用され、20世紀中頃までは広く流通していました。

しかし、その人気の高さに比例して乱伐が進み、数十年の間に天然資源は激減しました。結果、1970年代から80年代にかけて明らかに資源が枯渇し始め、環境破壊の懸念が国際的に高まりました。

このため、1992年にワシントン条約(CITES)の附属書Iにハカランダ(Dalbergia nigra)が指定されました。附属書Iとは「絶滅のおそれのある種で国際取引を原則禁止する」という厳しい規制で、これによりブラジル産の原木や製品の輸出入は厳格に管理されることになったのです。条約発効後は、新規に伐採して国際取引されるハカランダはほぼ存在しなくなり、市場に流通するのは条約施行前からストックされていたものか、特殊許可が出たものに限られます。

さらに、ワシントン条約指定により、生息地保護や植林活動が進められていますが、成長に数十年を要するため、資源の復活には長い時間がかかります。現在ではブラジル国内で街路樹としての植樹など保護活動も行われているものの、即効的な供給回復は難しい状況です。

このように、天然資源の枯渇と国際的な保護規制によって、ハカランダは「現代世界で最も入手困難かつ価値の高い木材」のひとつになりました。

その希少性が音の価値を高める

ハカランダの希少性は価格面にも大きな影響を与えています。中古楽器市場では、ハカランダ製の名器は数百万円から高級車が買えるほどの値段がつく例も珍しくありません。さらに、良質な個体ほど流通量が少なく、入手が極めて困難なため価格が一層高騰しています。

一部のメーカーやルシアー(個人製作家)は、条約施行以前の在庫材を大切に使い、新品ギターの生産を続けていますが、材料の確保は常に厳しい状況です。加えて、代替材としてインディアンローズウッドやマダガスカルローズウッドが使われるケースも増えていますが、ハカランダ独自の音と風合いには及ばず、専門家や愛好家による評価は依然としてハカランダに高い比重を置いています。

まとめ

ハカランダはただの木材ではありません。長い年月をかけて育まれた自然の芸術品であり、「いい音」を追求するギタリストにとっては夢の材料。その希少性は環境保護と技術の進化が交錯する現代の問題でもあり、今後も尊重と愛着を持って大切に扱われ続けることでしょう。ハカランダはまさに、音楽の時間を煌めかせる「音の宝石」として、これからもギター界に輝きを放ち続けるのです。

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