Skip to content
en
Japan JPY

Hofner 500/1 - ビートルズを支えた伝説のバイオリンベース

on

先日、当店に入荷した1970年頃の「Hofner 500/1」
商品ページはこちら
知らない人からすると見た目から「変わり種」に見えるかもしれませんが、素晴らしいベースなので歴史とどんな特徴なのかをまとめてみました。
ぜひ読んでみてください。

1950年代後半、ドイツの楽器メーカーHofnerが生み出した500/1は、ポール・マッカートニーによって不朽の名器となりました。通称「バイオリンベース」と呼ばれるこの楽器は、そのユニークな外観と温かみのある音色で、ロック史に大きな足跡を残しています。

歴史と開発

1955年、ウォルター・ヘフナーは、フェンダーやギブソンのエレクトリックベース製造に触発され、自社の技術を活かした高品質なバイオリン型エレクトリックベースの開発に着手しました。
翌1956年、フランクフルト・ミュージックフェアで500/1モデルが初お披露目され、その軽量で演奏しやすい設計が注目を集めました。

特徴的なデザインと構造

500/1の最大の特徴は、シンメトリカルなバイオリン型のボディです。
このデザインは、特に左利きのプレイヤーにとって魅力的でした。ポール・マッカートニーが左利き用の500/1を選んだ理由の一つも、この対称的な形状でした。
そして、中空構造を採用することで、軽量化と独特の音響特性を実現し、重量はわずか2.5kg程度で、当時の一般的なベースギターの半分以下。
さらに中空ボディ構造ながらもサウンドホールを作らなかったことで、セミホロウボディの特性を持ち、豊かな音色と適度なサスティーンを実現しています。
ソリッドボディのベースと比べると、アタックがソフトで丸みのある音が特徴的で、このサウンドはロックンロールやビートミュージックとの相性が抜群でした。


ネックはメイプル材とビーチ材のラミネート構造で、指板にはエボニー材を使用。
ピックアップには、独自開発のピックアップを2基搭載しており、コントロールはボリューム2基とトーン2基、さらにリズム/ソロを切り替えるローター式スイッチを装備しておりサウンドメイキングの幅も広いのが特徴的です。

ポール・マッカートニーとの出会い

1961年、ハンブルクでライブ活動を行っていたビートルズのポール・マッカートニーは、500/1と出会います。
左利き用の楽器を探していた彼は、Hofnerの代理店で特注の左利きモデルを注文。
その手頃な価格と軽量さ、そして何より美しい外観に魅了されました。

この出会いは、500/1の運命を大きく変えることとなり、ビートルズの人気上昇とともに、この特徴的なベースギターは世界中で注目を集めるようになリました。エド・サリバン・ショーでの歴史的な演奏や、数々の名曲のレコーディングで使用されたことで、500/1は「ビートルベース」としても知られるようになる。
ポール氏は1963年にはもう1本を入手しています。

興味深いのは、1961年製のベースが2024年に発見されるまで、長年行方不明だったことです。1972年に盗まれたこのベースは、「ロストベース・プロジェクト」の努力により、ロンドンのノッティングヒル地区で見つかりました

現代における評価と影響

現在も500/1は、Hofner社の看板モデルとして生産が続けられています。
現行モデルは、オリジナルの特徴を継承しながら、現代のミュージシャンのニーズに応える形で細かな改良が加えられており、 その独特な見た目とサウンドは、様々なジャンルのミュージシャンたちを魅了し続けています。
バイオリンベースという新しいカテゴリーを確立した500/1は、楽器デザインの可能性を広げた革新的な存在として、60年以上の時を経た今なお高い評価を受けています。
それは、楽器としての優れた品質はもちろん、ビートルズとともに歩んだ豊かな歴史と、時代を超えて愛され続ける独自の魅力があればこそだろうと思います。

 

 

Related Posts

Guild――職人たちの誇りが紡いだアメリカン・ギターの物語
June 10, 2025
Guild――職人たちの誇りが紡いだアメリカン・ギターの物語

創業者のアルフレッド・ドロンジ氏 ジャズの街ニューヨークで生まれた「ギルド」 1950年代初頭、アメリカ音楽界は大きな転換期を迎えていた。ジャズが花開き、やがてロックンロールの波が押し寄せる――そんな時代、ニューヨークの楽器店主アルフレッド・ドロンジは、音楽と職人技の未来に心を燃やしていた。彼の夢は、単なるギター製作ではなく、職人たちの誇りと魂を込めた“本物”のギターを生み出すことだった。運命の糸は、エピフォン社の激しい労働争議によって動き出す。伝統あるエピフォン工場が閉鎖され、腕利きの職人たちが行き場を失ったのだ。ドロンジは彼らの技術と情熱に着目し、「ギルド・ギターズ(Guild Guitars)」の設立を決意する。ギルド――その名は中世ヨーロッパの職人組合に由来し、手工業の誇りと連帯を象徴していた。1952年、ニューヨークの片隅に小さな工房が誕生する。そこには、エピフォンで鍛えられた熟練の職人たちと、ドロンジの信念が息づいていた。ギルドの最初のギターは、ジャズギタリストのために設計されたアーチトップモデル。ニューヨークのクラブで鳴り響くその音色は、やがてプロミュージシャンたちの間で話題となっていく。 ウッドストックとともに――アコースティックの黄金時代 1954年、ギルドはニュージャージー州ホーボーケンへと工場を移転。さらに1960年代後半にはロードアイランド州ウェスタリーへと拠点を移す。この時代、アメリカはフォーク・リバイバルの熱気に包まれていた。ウッドストックの伝説的なステージで、ギルドのアコースティックギターはジョン・デンバーやリッチー・ヘブンスといったアーティストの手で鳴り響き、その名声を不動のものにする。ギルドのギターは、単なる楽器以上の存在となった。職人たちの手仕事による堅牢な造り、美しい木目、そして豊かな響き――それらは、アメリカの音楽史に深く刻まれていく。エレキギターの分野でも、バディ・ガイやブライアン・メイといった名手たちがギルドを愛用し、その個性的なサウンドは多くのファンを魅了した。 試練と再生――ギルドの魂は消えない 1972年、創業者アルフレッド・ドロンジが航空機事故で急逝する。音楽シーンはエレクトリック、さらにはシンセサイザーへと主役が移り、アコースティックギター業界は冬の時代を迎えた。ギルドもまた、経営の波に翻弄されることとなる。 だが、ギルドの魂は消えなかった。職人たちの手によるギター作りの伝統は守られ続け、幾度もの買収や経営危機を乗り越えてきた。21世紀に入っても、ギルドはアメリカン・ギターの象徴として、アコースティック、エレクトリック、ベースギターの分野で高い評価を受け続けている。 伝統と革新のはざまで ギルドの歩みは、まさにアメリカ音楽史の縮図だ。時代の波に揉まれながらも、職人たちの誇りと情熱がブランドを支えてきた。ギルドのギターには、創業者ドロンジの夢と、エピフォンから受け継がれた職人魂、そして数多くのミュージシャンたちの物語が詰まっている。今もギルドのギターは、世界中のステージで、リビングルームで、夢を奏で続けている。音楽を愛するすべての人に――ギルドは、職人たちの絆と誇りを伝える“ギルド(組合)”の名に恥じない、唯一無二のギターブランドなのだ。

Read More
ドレッドノート誕生の物語――マーティン社の創業者と職人たちの挑戦
June 10, 2025
ドレッドノート誕生の物語――マーティン社の創業者と職人たちの挑戦

クリスチャン・フレデリック・マーティン氏 19世紀初頭、ドイツの小さな村で生まれ育ったクリスチャン・フレデリック・マーティン(C.F.マーティン)は、家具職人の家系に生まれながら、幼いころから楽器製作に強い憧れを抱いていました。15歳で単身ウィーンへ渡り、当時ヨーロッパ随一のギター製作家ヨハン・シュタウファーのもとで修業を積み、ギター職人としての腕を磨きます。やがて故郷に戻ったクリスチャンは、ギター工房を開きますが、閉鎖的な職人ギルドとの軋轢に悩み、自由な創作活動ができなくなります。夢を諦めきれなかった彼は、1833年、家族とともに新天地アメリカへと渡ります。ニューヨークで小さな楽器店を開業し、やがてペンシルベニア州ナザレスに拠点を移して本格的にギター製作を始めました。マーティン社は、創業者クリスチャンの時代から「革新」と「伝統」の両立を大切にしてきました。Xブレイシング構造の発明や、スチール弦ギターの開発など、時代のニーズを敏感に捉え、職人たちの手仕事による高品質なギターを生み出してきたのです。 新たな時代への挑戦――ディットソン社からの依頼 時は流れ、20世紀初頭。アメリカ音楽界では、よりパワフルで豊かな響きを持つギターが求められるようになっていました。そんな中、マーティン社の三代目フランク・ヘンリー・マーティンは、社の伝統と職人たちの技術を信じ、新たな挑戦に乗り出します。1916年、ボストンの楽器販売会社ディットソンから「これまでにない大きなボディのギターを作ってほしい」という依頼が舞い込みます。「ドレッドノート(戦艦)」と名付けられたこの新型ギターの設計は、まさに未知への航海でした。社内の職人たちは、これまでの経験と知恵を結集し、ボディサイズ、内部構造、サウンドバランスの最適化に取り組みます。伝統的なXブレイシングをベースにしつつも、大型ボディならではの鳴りと耐久性を両立させるため、何度も試作と改良を重ねました。「音楽の未来を切り拓くギターを作ろう」――創業者から受け継がれた情熱と誇りが、職人一人ひとりの手に宿ります。こうして完成したドレッドノートは、従来のギターをはるかに凌駕する音量と低音の豊かさを持ち、やがてカントリーやフォーク、ブルーグラスなど多様な音楽ジャンルで愛されることになります。 伝説の始まり――ドレッドノートが世界を変えた Read More

Drawer Title
Similar Products